■場所
駅前の薬屋の駐車場
■人物
『俺』と子供二人と昔の思い出たち
■状況
昔の空き地が駐車場に変わってしまう
■一言
『おじおじ』ってなんだ?
■本文
俺がそれを見かけたのは家に帰る途中だった。久しぶりに定時に終わった仕事に心が弾み、娘になにか最近の玩具でも買って帰ろうかという考えが頭を支配していた時だった。
駅からバス停まで歩く数十秒間、アスファルトで固められた地面を歩いていると、薬局の隣の駐車場で工事が行われているのが見えた。
不断の俺ならまるで気にしなかっただろう工事だった。しかし、いつもより気が楽だった俺の感情はどうしてかそちらになびいた。
それは、立ち止まって見るほどでもなかった。最近流行の『時間制パーキング』というやつだ。頼りないヘルメットを被ったおじさん達がコンクリートを掘ったり埋めたりして、車のタイヤをロックする機械を取り付けていた。
少し感慨深い気持ちになった。どうしてだかは分からない。夕闇に融けてゆく周りのビルの輪郭とか、悲しく響くカラスの鳴き声とかに精神を揺さぶられたのかも知れない。
ふと、足に何かが当たる感じがした。気のせいかと思って顔を向けると、足下には一つの野球ボールが転がっていた。
「ごめんなさいー!」
声のした方を見ると、野球帽を被った十歳位の女の子がいた。その後ろには五歳くらいの――弟だろうか――男の子がおじおじしていた。
「これ、君たちの?」
足下のボールを拾って、二人の小さな野球選手に問いかけた時、俺はあることを思い出した。
「うん、ありがとうおじさん!」
「こら、俺はおじさんなんて歳じゃないぞ?」
俺がまだ小学生だった頃、この町で、いっぱしのやんちゃ坊主をしていた頃。