■場所
病院
■人物
『僕』とクラスメイト
■状況
お見舞いに来ている
■本文
「ほら、こっちこっち!」
まるで病人とは思えないくらい明るい声が呼ぶ。僕はやれやれと思いつつも顔をほころばせ、その声の呼ぶ方へ歩を進める。
「ほらー、あれ!」
呼び声の主である女の子は、僕のクラスメイトだ。もちろん、ただのクラスメイトではなくて、かれこれ十年以上同じクラスという筋金入りのクラスメイトなのだった。
「あの雲、クジラに見えない?」
そう言って、彼女は病院の渡り廊下から見える大きな空を指さした。
「あ、すげぇ、本当に魚っぽい」
「魚じゃなくて、クジラに見えない?」
どこか不満そうな顔をしてこちらをのぞき込んでくる。その顔を見て、僕はさらにあまのじゃくなことをしてみたくなる。
「くじらねぇ……、ほむ、どちらかというと……ゴジラに見えるというか」
「はぁ? どの辺が怪獣なわけ?」
「ええと、例えば、僕が教室で居眠りをしているとですね、火を吐いてくるんですよ、『寝てんじゃねーこいつ!』とか言って」
「へぇ、あのクジラさんってそんなことするんだ……って、あたしのこと馬鹿にしてるだろ! こいつ!」
突如として目の前の少女が怪獣へと変貌。必殺技である『すじを痛めるヘッドロック』が僕を襲う。この技は、その名の通りに技をかけられた方ではなくかけた方がすじを痛めるという、まさに諸刃の刃のような技なのである!
「ぐぁ、痛い痛い、びょ、病人がこんなことしてて良いんですか……」
「へ、へへ、なぁに、あたしにはあんたなぞお茶の子さいさいでしょうが……」
二人とも、痛くて声がしりすぼみになる。