■場所
教室
■人物
守と誰か
■状況
寝ぼけている
■本文
たくさんの人混みの中、守(まもる)は何かが地面に落ちているのを見付けた。それはどうも金属とかガラスとかの類らしく、流れゆく足並みがとぎれる一瞬にきらきらと光って見えた。
守はそれを拾おうと頑張った。人混みを押しのけて、顔々の壁を突き抜けて、それに手を伸ばそうとした。しかし、どうしてもその光には近づけず、守の手は人の靴や服や皮膚をのみつかんだ。
そうしているうちに、いつしか守はあきらめてしまった。届かない光に手を伸ばすくらいなら、目の前の日常に浸っていよう。光の中の輝きを夢に願うくらいなら、日の暮れる毎日に思いを馳せよう。
こうして守は、可能性の一部を絶った。
「おはよう!」
声が聞こえて守が顔を上げると、まずはじめに窓から差し込んでくる光に目を細めた。それからあくびの波が訪れ、ひとまず伸びをすると再度机の上に突っ伏した。
「……おはよう」
眠気の狭間から守に呼びかける声が聞こえた。それはどこか殺気立っていて、聞く者に多少の恐怖を与えるような響きをしていた。
「…………おーい、起きろよ」
今度ははっきりと守の耳にも届いた。しかし、どこか寝ぼけていているから声の主がどんな感情でいるのかは分からなかった。
「…………(ブチ)」
何かがちぎれる音が聞こえた。その次には、何かが派手にひっくり返る音。そして、何かが壁に激突する音。最後には静寂のみがそこに残った。
(シーン)
周りにいた人達は大きな口を開けてこちらを見ている。