■場所
電車の中とか
■人物
『僕』
■状況
過去を思い出している
■本文
子供の頃、宇宙人が世界を征服してしまうのではないかと怯えていた。テレビのドラマでは、宇宙人というのは常に恐ろしい形相をしていて、何かしら僕たちに危害を加えようとしている存在だった。でもユーフォーを見た人なんて身近にいなくて、僕たちの生活に彼らが介入することなどなかった。
それは、僕たちのとてつもない思いこみによるものであったと認識しなければならないと思う。なぜなら、僕は見てしまったから。空をかける金属の乗り物でもなく、顔の半分以上をしめる大きな赤い目でもなく、けがをした子供に手をさしのべる、あの優しい後ろ姿を。
あの日、僕は無謀な旅の最中にいた。
『就職したら、何にも出来なくなるんだぜ? だったら、今から旅に出よう!』
友達の言葉に絆されて、急いで荷物をまとめた晩夏の夕方。気付けばもう故郷の空は遙か後方に流れ、僕は夜行列車の中にいた。
もちろん正規の方法ではなく、乗客の積み荷の隙間に隠れての移動だった。友達が提案したので初めはあまり乗り気ではなかったが、やってしまえば楽しくなるとはまさにこのこと。適当な荷物から果物を取り出してかじったり、暗い貨物車両の中でかくれんぼのようなこともした。
しかし、楽しい時間はそう長くは続かなかった。開け放たれた扉、驚いたような顔をする車掌風の男、続いてやってきた幾人かの足音を聞いて、僕はようやく自分たちのしていることに気が付いた。抵抗などどれほどの役に立とうか。引き出されて投げ捨てられて、気付けば僕たちは森の中にいた。
起きあがろうと体に力を入れると肋骨辺りが痛んだ。