■場所
なし
■人物
双子の片割れ
■状況
過去を思い出している
■本文
取り留めのない会話に幸せを見いだしていた、あの夏。
二人で手をつないまま浜辺まで散歩して、服が汚れるのもまるで気にしないで水を掛け合った。遊び疲れた後には浜の近くの販売機で冷たい飲み物を一つ買って、二人で分け合って飲んだ。太陽の力強い日差しに目を細め、どちらともなくかけっこを始める。追いついたり、追いつかなかったり、時には転んだり、人にぶつかったり。
家に帰るとお母さんが二人を呼んで、出来立てのアップルパイを切り分けてくれた。焦ってがっつこうとすると、「手を洗ってきなさい!」ときつーく叱られる。どたどたと足音をたてて水場にいき、代わりばんこで手を洗う。きらきら光る水しぶきを見て、また二人で水の掛け合いっこを始めるときもあった。
夜は、満点の星空に思いを馳せた。お父さんと一緒に屋根の上にのぼって、二人はたくさんの星座を教わった。でも、一番の楽しみは星座じゃなくて、お父さんの作るホットココアだった。屋根の上でしか飲めないごちそうは、二人の記憶に暖かく残っている。たまにお母さんが怒って「屋根の上は危ないのよ」と言ったけど、結局は隣でココアを飲んでいるのを見たときにはみんなで笑いあった。