■場所
ストーブの前
■人物
『あたし』
■状況
ニンニクを焼いている
■本文
ことことと音を立てているヤカン。煌々とする石油ストーブ。あたしはその前に座って神妙な顔つきをしていた。
割り箸を持ち、ひとかけらのニンニクを挟んで構える。ゆっくりとストーブの天板に近づけ、離す。
瞬間、表面の焼ける音がしてニンニクがはねる。あとはそれきり動かなくなるから、じっくりと焼けるのを待てばよい。
あたしは額に浮かんだ汗を腕で拭う。ストーブの近くにしばらくいたことと、ニンニクを置く瞬間の緊張があたしに汗をかかせた。立ち上がり、新鮮な空気が肌を冷却するのを感じる。一仕事終えた気分だった。
冬の醍醐味と言ったらやっぱりこれ。ストーブの上で色々な物を焼くこと。コンロとか直火とかで焼くのとは違って、ストーブの上だと焼き加減が調節しやすい。そのため、全体をむらなく焼けるのはもちろん、焦げ色だってお手の物。その代わり、ほぼ絶え間ない焼き加減の管理が必要だけど。
立ち上がって涼しさを感じていたあたしは、再度しゃがんでストーブの天板と顔とを同じ位置にする。途端にストーブの熱気があたしの顔を襲う。
しかし、そんな物に屈するあたしではないのだ。この道十年のベテランには少しの暑さなど気にならない。不敵な笑みを浮かべて、割り箸を構えた。