■場所
バス停
■人物
『わたし』とキナ先輩
■状況
先輩が声を掛けてきた
■本文
学校帰り。駅に向かうバス停のベンチに座っていると、キナ先輩に声をかけられた。
「やっほ、タマちゃんも今帰り?」
今日は放課後に環境委員の仕事であるゴミ拾いをしていたので、部活の誰とも会わずに一人寂しくバスを待っていたところだった。そこへ現れたキナ先輩は、オレンジ色のすごく目立つマフラーを首に巻いており、とても上機嫌に見えた。
「あ、キナ先輩、お疲れさまです」
わたしは先輩に答えて、中途半端な位置に座っていたベンチを少し移動した。先輩が隣に座って、二人でバスを待つことにした。
「そういえば、今日の昼休み、タマちゃんは知ってる?」
他愛のない話をしていると、思い出したように先輩が聞いてきた。しかし、わたしには思い当たる節がまるでなかった。
「ええと、多分わかりません」
すると、まぁそうだよねー、と先輩が遠くの方を見ながら言った。それから私に向き直り、真剣さと面白さを足して2で割ったものを顔に浮かべながら口を開いた。
「タマちゃんはあんま外で遊んだりしないから知らないと思うけどさ」
そこで言葉を切って、先輩は辺りを見回した。誰もいないことを確認すると、さっきの表情に戻って話を再開する。
「……今日の昼休みの時間、『マルヤツ』がついにやらかしたんだってさ」
先輩から発せられた名前があまりにも耳慣れないものだったので、私は首を傾げた。
「ああ、タマちゃんはまだ一年だし、やっぱり分からなかったかな」
それから少しの間、先輩は『マルヤツ』について説明してくれた。
去年の夏休み。先輩がそろそろ部活になれてきて、他のことに目を向けられるようになった頃。