■場所
なし
■人物
『僕』とその母親
■状況
僕が母との思い出を回想している
■本文
父親がいないということは、僕にとってそこまで辛いことではなかった。あまりにも小さな頃にいなくなったせいで父との思い出は無かったし、僕のそばにはいつも母がいてくれた。そのおかげで、僕は寂しい思いを抱くことなく小学校の中学年まで元気に過ごすことが出来た。
しかし、順調だったのはそこまでだ。あの日、絶対に忘れることの出来ない出来事が僕と母に襲いかかり、これまでに築き上げてきた細やかな生活を一瞬にして転覆させてしまったからだ。
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友達の家から帰ってきた僕は、玄関で靴を磨いている母を見付けた。ただいまの挨拶を言ってから、きちんと靴を揃えて家にあがる。
「冷蔵庫にシュークリームが入ってるわよ」
「はーい!」
自分の部屋で今日の宿題をやろうと思っていたが、お母さんの言葉で予定を変更する。石鹸で手を洗い、うがいをして準備を整える。台布巾できれいにテーブルを拭いたら、目的の代物を冷蔵庫から取り出す。
白い皿に乗せられたそれは、光り輝いて見えた。給食でも見られない程の神々しさがひしひしと伝わってくる。まるで生きた宝石だなどと思ったところで我に返り、お茶でも煎れるために