■場所
体育館の裏
■人物
『僕』と彼女
■状況
力のない自分が悔しい僕が、昔を回想する
■一言
一昔前のノベルゲーム風にしてみようとした
■本文
雪の中。
吹きすさぶ風は、どんな言葉さえも聞き取れなくするほど、強かった。
遠くで叫んでいる彼女の背中。
視界が白く霞み、僕があの手を掴もうともがいても、届かなく。
足がどんどん冷たくなった。
動かそうとしても、言う事をきかない。頬に打ち付ける雪の冷たさが体中を覆った。
いつまで目を開けていられたのだろう。気付いたら、僕は前を見ていなかった。
僕は自分の手を見ていた。うつむいて、雪の地面に両手をついて。
寒かった。でも、僕は頑張れるはずだった。
遠くへ行ってしまう彼女を救えるはずだった。
それなのに、何も出来ないまま、自分の手を見ていた。
動かない手、外の世界の寒さに負けてしまった手。
それは僕自身を表していた。
昔の僕は、一度転んだら起き上がれなかった。心の中に引きこもり、他の誰とも遊ぼうとしなかった。
まるで動かない僕は、自分に興味を示す人なんていないと思っていた。
彼女が現れるまでは。
体育館の裏。いつものようにふさぎこんでいた僕は、視界の端に動くものを見つけた。
ゆっくりと顔を上げると、動く影は体育館の外壁の隙間に隠れた。
不審に思いそこをのぞくと、見たことのない顔があった。
初めは気恥ずかしそうに顔を背けていたが、僕がしゃくりあげるのを見た途端にこっちを向いて言った。
「どうしてないているの?」
僕はびっくりした。今までに、そんな事を聞いてくる子は一人もいなかった。
だから、どうやって返事をしたら良いのか分からなかった。
「……どうして、ないてるの?」
もう一度聞かれた。
「……もしかして、いじめられたの? そうなの?」
不穏な空気が流れ出した。僕は何をしたら良いか分からず、いつの間にか彼女に向かって頷いてしまっていた。
「わかった。そんな意地悪なやつはあたしがやっつけてやるわ!」
力強く肩を叩かれてから、僕は自分のしたことに気付いた。
やっつけるだなんてとんでもない。そんな事をしたらもっといじめられてしまう。
僕は焦った。彼女は既にずんずんと歩き出していた。急いで追いかけてとめなくてはならない。
しかし、事はそんなに単純ではなかった。