■場所
何処かの学校の体育館
■人物
『僕』と女
■一言
一癖ある人物を書いてみようと思った
■本文
小さい頃から、兄弟げんかは良くないことだと母に言われ続けてきた。
「お兄ちゃんがぶった」
だから、たまに弟が嘘をついて母にすがりつくと、僕は行き所のない悲しみに包まれるのだった。
「タカシ、あなたはまた弟をぶったの?」
そんなはずはなかった。僕は母に言われたとおりにしていた。弟がどんなにわがままに振舞っても、言葉を使って解決しようと努力した。
「……黙っていちゃ分からないでしょう?」
でも、僕はその事を口に出して弁明することが出来なかった。
「……もう、どうすれば良いのよ……」
なぜなら、僕が悪くない事が分かれば、母は弟を責めるからだ。
「ねぇ、お兄ちゃんは本当にキミヤスをぶったの?」
弟が責められれば、きっと弟は僕とけんかをすることになるだろう。
「……嘘じゃないよぅ」
だから、僕はいつも損な役回りを演じなければならなかった。
「僕がぶったの。ごめんなさい」
顔をうつむけて、なるべく弟の方を見ないで言うと、母は決まってこういった。
「……またなの。じゃあ、ちゃんとキミヤスの頭を撫でて、謝りなさい」
そして、僕はいつも思う。
この世の中は、きっとこういう不公平が一杯詰まっているのだろう、と。
■■■■■■■■■■■■■■■
「ホシノ、ちゃんとボールの片付けしろよ」
夕暮れ時の体育館。ひとけのない用具倉庫の入り口で僕は言った。
「……はい、分かりました」
ホシノは返事をして、緩慢な動作で倉庫内に散らばっているボールを片付け始める。
「僕は帰るから、先生には二人で片付けたってきちんと言っておくんだぜ?」
「……はい」
こちらを向かないホシノに少しイラついたが、僕のほうが大人である事を示すために我慢する。
「じゃぁ、また明日」
今度は返事を待たずに、僕は鞄を背負って歩き出す。人の居ない体育館は静まり返り、とても清清しい感じがした。
体育館の入り口で上履きを脱ぐ。昇降口まで行かないで済むように、あらかじめ持ってきておいた靴をはいて外に出る。脱ぎ捨てた上履きはホシノが昇降口まで持っていく予定だ。
外は綺麗な夕焼け空だった。この町の周りには山がなく、僕の地元とは違い夕焼けがとても綺麗だ。
眠気覚ましに伸びをして、歩き出そうとした時だった。
「――っだーれだ!」
女の声が聞こえ、いきなり視界が真っ暗になる。遅れて、目の辺りに冷たいものを感じる。
「……えーっと、誰だろうなぁー」
僕はわざと分からない振りをして、目隠ししている女をじらす。
「えー、分からないの? じゃぁ、こうすれば、分かるかな……?」
そういって、女は僕に