■場所
宇宙船の中
■人物
洋子と宇宙人二人
■状況
宇宙人が地球人に問いかけること
■本文
洋子は、良く分からない場所にいました。さっきまでは確かに自分の部屋に寝ていたのです。しかし、目を覚ましたらここに立っていました。
辺りを見回すと、おかしなところばかりが目に付きます。とても高い天井、鏡のようにつるつるした床、宙に浮いているまあるい金属、少し離れたところに降り注ぐ光の柱。それに、遠くに見えるガラス張りの壁の向こうには、この前テレビジョンで見た宇宙のようなものが広がっていました。
しばらく、洋子はその場に立ちつくしていました。これからきっと何かが起こるのだ、という小さな予感がありました。しかし、恐怖心のようなものはなかったのです。
やがて、音もなく、洋子の背後から何者かが近づいてきました。
「ほう、まだ子供ではありませんか」
いきなり聞こえた声に洋子は驚き、目を見開いて振り返りました。
そこには、テレビジョンのアニメでも見たことのないような人が二人で立っていました。
「おや、驚かせてしまったかね」
洋子はたじろぎました。しかし、走って逃げ出すことはありませんでした。
「報告書によれば、地球の人間の中から無作為に選び出したとのことです」
もう一人の人が言いました。洋子は二人に目を向けたまま、ただじっと耳を傾けています。
「そうか。なら、この子供にすべてが委ねられているとしても、何も問題はないな」
そう言うと、その人は洋子に向き直りました。表情は読みとれませんが、どこかしら真剣な雰囲気を漂わせていることは分かりました。
「やあ、初めまして。私たちは、君と話がしたくて、君をここに連れてきたんだ」
その人は、さっきまでの声よりも優しく語りかけました。
「私の名前は***、こっちのは※※※※※と言うんだ。君の名前は?」
彼らの名前の発音は、洋子にはまるで聞き取れませんでした。
「私は、洋子です」
洋子が言うと、二人は少し驚いたようでした。
「……なるほど、こんな状況でもちゃんと受け答えの出来る子供のようですね」
「そのようだ。手間が省ける」
勝手に話をしている二人を、洋子は不思議そうに見ていました。
「さて、洋子。早速話を始めよう」
「その前に場所を移動しましょう」
二人が言うと、どこからか鳥の鳴くような音がして、次の瞬間には別の場所に移動していました。洋子はあっけにとられています。
「これからは順を追って話さなければならない。地球のこと、私たちのこと、そして、君の意見」
こんどの場所は、さっきまでの場所に比べるとまるで違いました。洋子が辺りを見回すと、小学校にある大きなケヤキみたいな木や、食べられそうな木の実が成っている木、色とりどりに咲き誇るたくさんの花などが見えます。
「……おや、驚いたのかい? ここは私たちの菜園なんだ」
洋子はその人の声に反応しました。
「菜園?」
「そう、菜園。私たちが生きていく上で必要な食べ物、植物、動物はここで作っているんだ」
「***、それは順を追って話しましょう」
途中で※※※※※が口を挟みます。
「おっと、そうだったな。失敬」
洋子が聞きたかった話は途中でとぎれ、二人は改めて洋子に向き直りました。
「さて、本題に入ろうか」
そう言うと、空中に一枚の白い紙が現れて、表面に地球の図が描かれます。
「君も少しは聞いたことがあるように、今の地球はひどい有様だ」
「これまで均衡を保ってきた地上のやりとりの間に、一つの異常が発生している」
二人が言うと、地球の色が瞬く間に茶色になっていきます。
「これが続くと、今示したように、地球が破滅してしまう」
※※※※※が振り返り、指示棒で地球の先をつつきました。
「……その異常って、地球温暖化のこと?」
模型の地球が茶色くなるのを見かねて、洋子が口を開きました。それを聞いて、二人は口元に笑みを浮かべました。
「いや、違う」
「……やはり、その思いこみは調査通りか」
「えっ」
洋子は、的を射ていたとばかり思っていた自分の発言を完全に否定されて、二の句が継げません。
「君が気にすることはない。地球の温暖化は、確かに地球人にとっては大変深刻な問題だろうから」
洋子は憮然とした顔になり、彼らの話を促すように足下の芝生の上に体育座りをしました。