■場所
公園
■人物
小学生二人
■状況
リコーダーの練習をする
■本文
秋空と言うに相応しい澄み渡った青が、木々の隙間から覗いていた。紅に染まった落ち葉が辺りに敷き詰められ、慎ましやかな遊歩道を見えにくくしている。風はなく、鳥たちは自由に鳴き回り、思い思いにおしゃべりを楽しんでいた。
そんな良い日。市民公園の林の中、様々な色に囲まれている二つの黒い頭が動いていた。その二つは遠ざかりすぎず、近づきすぎず、仲良く目的の場所へと歩を進めていた。
二人が歩く度に、歩道の落ち葉が乾いた音を立てる。片方はそれに敏感に反応し、足を踏みならすように歩き、わざと大きな音を出していた。
もう片方はあまり興味がないのか、それとも他に理由があるのか、落ち葉にはしゃいでいる相方を見ながら微笑んでいた。
やがて二人が足をとめる。そこは、歩道の開けた場所のようで、面白いことに空を覆っていた木々も少なく、二人にとっては絶好の広場と言えた。
「着いた!」
「着いたね」
どちらともなく同じ事を同時に言った二人は顔を見合わせたが、少し頬を赤く染めたのちにそれぞれランドセルを降ろし、細長い包みを取り出した。
「今日はどっちが初めにやる?」
「あたしは昨日成功したから、今日は愛ちゃんからでしょ?」
おとなしい方が首を傾げながら主張する。対するはしゃいでいた方――愛ちゃん――は、うむむと唸ったあと、手にしていた細長い包みを頭の上で二、三度振り回して返した。
「じゃあ、何にしようかなぁ……」
これから練習する曲の選別の事であった。おとなしい方はあらかじめランドセルから取りやすいように工夫しておいた音楽の教科書を、両手で愛ちゃんに差し出す。
「今日はこれにしない?」
おとなしい方が指定した曲は、『風』というものだった。