■場所
デパートのおもちゃ売り場
■人物
父母、娘と息子
■状況
たまに来るおもちゃ売り場では何かを買ってもらえそう
■本文
たまにしか連れてきてもらえない場所。家を出て、結構大きな道を何回か曲がって、その先にあるもっと大きな道をしばらく進むと見えてくる場所。お父さんとお母さんと一緒に車を降りると、どこか寂しい気持ちになる場所。でも、お店に入ればそんな気持ちも吹き飛んでしまう場所。デパート。
お姉ちゃんはお気に入りの電子辞書を抱えてお母さんと手を繋いでいる。僕は大好きなお父さんに抱っこしてもらいながらお店に入る。すると、すぐに小さなエレベーターに乗って、高い場所にのぼる。お姉ちゃんは高いところが恐いって言うけど、そんなことない。このまえテレビで見たけれど、エレベーターで高いところにいても平気なんだ。ガラスが割れたりしても、シュワちゃんが助けに来てくれる。落っこちそうになっても、ヘリコプターが助けてくれる。
お父さんのあったかい中で目をつぶっていたら誰かが僕の服を引っ張った。下を見ると、それはお姉ちゃんだった。きづいたらもうおもちゃ売り場についていた。きょろきょろすると人が一杯。お父さんとお母さんはなんだか難しそうな顔をしてる。
そんなの構うもんか。僕は「もう降りるの?」というお父さんの声を無視してずりずり地面に降りる。それで、お姉ちゃんが先に行くのを追いかける。
なにか面白いものはないかな。お姉ちゃんを追いかけると右と左が必ず箱になる。お姉ちゃんは『がんぷら』っていうやつが好きみたいで、今年こそサンタさんからもらうんだと言っていた。僕にはまるで分からないので、そこは『大人のやり方』っていうかっこいいやり方を真似して、適当に付き合ってあげるんだ。
「ねぇ健二(けんじ)、このスプレーとこのスプレーとではどっちの方が好きな色してる?」
「うーん、僕はこっちが好き」
こんな風にね。
お姉ちゃんの『がんぷら』を見終わったら次は僕の番だ。上の方にあるお姉ちゃんの手を引っ張って、最近学校で流行ってるミニ四駆のコーナーを連れまわす。もしかすると600円もするアルミローラーを買ってくれるかもしれないなんて思ってるけど、いままでお姉ちゃんが僕に何かを買ってくれたのは一度きりしかない。それも