■場所
誰もいない部室
■人物
部員
■状況
秋の放課後、夕日の差し込む窓から見える野球部の練習風景等々……
■本文
その教室には、人の気配がなかった。不断は物理などの授業で利用されているが、校舎の最も端に位置しているからかそれとも窓からゴミ捨て場が見えるからか、放課後になるとその教室はどうも人の寄り付きがたい香りを醸し出す。
そして、その教室の入り口の前に黙って立っている一人の生徒もまた、どこか近寄りがたい雰囲気を発していた。
これらはまるで、一対で存在しているかのように自然に関係し、夕方の校舎に漂うもの悲しさから独立しているのだった。
やがて、先ほどからドアの前で立ちんぼうをしている生徒――女生徒――はおもむろにドアノブに手を添え、それをまわした。金具のきしむ音が人気の無い廊下に響き、ドアが開かれる。
「……ぁ……」
女生徒が何かを言った。しかしそれは、たとえ彼女のそばで耳をそばだてて聞いていたとしても、明瞭に聞き取れるような声ではなかった。
やがて彼女は教室に足を踏み入れる。後ろ手にドアを閉めると、その足は教卓の前に進んでいた。
黒板の正面で立ち止まると、彼女の目が鋭く光る。教卓に両手をつき、誰も着席していない机を右から左へと眺めてゆく。それは、もしかすると教師の真似事をしていたのかもしれない。彼女は時間をかけてゆっくりと机を見回し