■場所
アパートの入り口
■人物
友人同士の二人
■状況
雨が降っている
■本文
「なんだこれ、尋常じゃないな」
控えめに開かれたアパートのドアから首を出しながら弘樹が呟いた。今日は忙しい大学の数少ない休みの日。昼まで寝るつもりで寝床にもぐったのは良いが、外から聞こえてくる大粒の雨がもたらす特有の音が耳に障って起きてしまったのだった。
足にはサンダルを引っ掛けて、ズボンもはいていない格好で外の様子を覗いていた。大風のせいで雨飛沫が吹き込む玄関には、人の活動的な気配が感じられなかった。
目を覚ましてから十五分程度経っているが、その頭には未だに眠気が収まっていてぼうっとした意識の中で、いつもの口調で冒頭の言葉を呟いた。その声は誰にも聞こえていないと思われたが、それでも弘樹の気付かない場所には人が潜んでいたようだ。まるで無造作に玄関のドアを閉めた弘樹のことを見ていた人がいたようだ。
それを証拠に、立ち並ぶドアのうちの一つの前に立っている青年は目の前のインターホンをしっかりと押し込んだ。機械的な呼び出し音が目的の室内に響き渡るのがドアごしにも分かった。少々お待ち下さいという同じく定式化された返事が返ってくる。
「よう、久しぶり」
「…………あぁ、お前かぁ!」