2007年9月9日


場所

無し

人物

『私』

状況

昨日の続き

本文

布団に包まって親に心労を負担させるようになってからしばらく経って、外の景色が木の葉色に染まってきた頃、私は鏡に映った自分の顔を見て、開いた口が塞がらなかった。ぽっちゃりとしたほっぺた、落ち窪んだ目、白と赤でグラデーションを作っている不健康そうな顔色。

内気な性格な人間が自分に対して何かの言い聞かせをするように、高校生の私は自分の顔は結構整っているなぁ、などと意味のない淡い自惚れを自覚していた。そんなものだから、醜く変形していた自分の顔を見つめたとき、私の心の中で何かが破裂するのが分かった。

二ヶ月ぶりに訪れた教室は、私を動物園の檻の中にいる生物を見るように扱った。恐らく、玉田芳子(たまだよしこ)はもうこの場所には来ない、リタイヤが出るの早いなぁこのクラス、という考えがクラスメイトの中にあったはずだ。

教室での私の存在は歓迎されず、むしろというよりもちろん、離れた場所でなされるひそひそ話が耳について離れなかった。

ただ、私には学校でやるべきことがあった。せめて週に四度は歌える場所・状況を探したい。自分の外見が変化したことで内面も変わったのだろうか、と思うくらいに私の意識は一つの純粋な目標を捉えていた。つまり、歌うことへの欲求を満たすための方法を探そうとしていた。

初めに私が考えたのが、学外の施設を利用する方法だった。どこか広くて音が漏れない部屋、若しくは広場があれば良い。

カラオケは嫌いだったので初めから学外の施設には含んでいなかった。その頃は、あんな賑やかで快活そうな場所に私が入ってゆくなんて出来ないと思っていた。歌うならもっと人の少ない場所で、それも身近な場所で、出来れば仲の良い友達と一緒に歌えればいいなぁと思っていた。