■場所
家の中
■人物
姉と『僕』
■状況
探し物はなんですか?
■本文
「えっ、見当たらないの?」
姉が目を丸くして驚いた。階段の上から僕を見下ろしているせいでその顔はどこか暗く沈んでいるかのように見える。
「うん、手当たりしだい探したんだけど……」
逆に階段を見上げている僕は、顔に光を受けている分明るく見えてしまう表情を出来うる限り深刻そうに見せる努力をした。もしかすると、姉が小さい助け船をよこしてくれるかもしれない。
「そっか……。じゃぁ、仕方がないね」
姉の返事は期待外れだった。
そのあと二、三言葉を交し、姉は自室に戻った。その場に残った僕は、これから起こるかもしれないあらゆる事態を想像し、階段をのぼる気力が萎えていった。逃げも隠れも出来ない。僕は、お父さんのカツラを失くしてしまったのだ。
事の起こりは一週間前。ホームルームで文化祭についての話し合いをしていた時。
「一応ね、皆にとっての初めての文化祭だから、出来る限り夏休み中に準備を終わらせられると良いよね」
担任の話が終わると、既に定めてあった取りまとめ役が二人――男女――が教卓の前に来て口を開いた。
「ええと、それじゃぁまず、文化祭の企画案がある人がいたら手を上げてください」
それを聞いた僕は、今日のホームルームは延長するかもしれないと感じた。
案の定話し合いはしばらく続き、目立った案の出ないまま授業終了のチャイムまで残すところ五分となった。
そこで、おもむろに手を上げて皆の注目を集めた奴がいた。後ろの席の勝原だった。
「委員長、カツラバーなんてどうかなぁ?」
「……カツラバー?」
「そうそう、みんながカツラを被って、それで喫茶店みたいにお茶とかお菓子とかを売るの。まるで馬鹿みたいじゃね?」
自分の案を馬鹿みたいと表現した勝原は、実は僕の友達でもあった。
「この丸刈りの頭に長髪のカツラを載せるんだよ。あ、こら逃げるんじゃない」
いきなり僕の頭を掴んできた勝原から逃れると、