■場所
通学路
■人物
自転車に乗った人が一人
■状況
雨の中、学校に向かうのは大変なことです
■本文
灰色の景色の中、一筋の道を直進する一台の自転車があった。地面が水溜りに埋もれ、泥水といくつもの轍とが自転車の足元をぐらつかせていた。
自転車は比較的順調に進んでいた。行く手を遮るものは無く、雨足もそんなに強くはなかった。だた、操縦者が合羽を着ていたので、その運転にはある程度の動き難さが伴ってはいた。何一つとして問題は無かった。
しかし、ここで変化が生まれた。それまでは単調に動いていた景色が何かを引きずるかのようにずれる。遅れて、音が聞こえる。固いもの同士がぶつかり合うような鈍い音。その音はあたりに静かに響き渡り、誰の耳に届くことなく消滅した。
そして、道の中央には転倒した自転車と転がり落ちた操縦者が残った。
「……いったーぁ。くぅ……」
操縦者は落ちたときにどこか打ったのか、冷たい雨の中にも関わらず、体をうずくめたまま目をつむっている。しばらくして、ゆっくりと動き始め、膝小僧を撫でながら立ち上がった。
「うあ、最悪……」
操縦者の視線の先には倒れた自転車と地面に転がっている荷物があった。荷物はビニール袋に包まっていたが、落ちたときの衝撃によって所々破けたり汚れていたりした。