2007年9月26日


場所

駅前

人物

『私』

状況

通勤もしくは通学のために駅へ向かう

本文

風の心地よさを感じながら自転車を走らす。私の前には誰も居ないから、結構飛ばせる。高校生になってから分かったことだが、うちの町の駅前商店街はまるで繁盛していない。店舗が古臭いし、店員に活気がないし、そもそも殆ど人が通らない。私が駅まで自転車を飛ばせるのはそのおかげだった。

駅まではあと七百メートルくらい。既に店を閉めている元ラーメン屋の店舗を過ぎて最初の交差点を右に曲がる。ややスピードを落として道の先、雲のまばらな空に視線を動かすと、面白い構図の風景が出来上がる。

左右を大きなマンションに挟まれているこの路地は、それだけではまるで何の感慨も含まないが、ただ一つのアクセントが加わると劇的な変化をする。白い空を細長く切り取って一つの絵画にしたようなイメージ。

私はこの風景が好きだった。それは、私が毎日駅まで直線の道を行かずにわざわざ曲がっている理由の一つだった。

青い風が吹く。左右の壁に遮られて日光は届かないが、透き通った空気は反射する光の前進を助けるように働く。だから、淡い影がそこここに溢れ、朝の躍動感を表している。自然と自転車をこぐ足は緩み、口が半開きになるのが分かる。いけない、いけない。電車の時間まであと七分しかないではないか。私は、急いで役場へ向かった。