■場所
湖のほとり
■人物
女の人
■状況
湖面にはたくさんの葉っぱが浮いている
■本文
風を受けて揺らめく湖面には、秋の彩りを示す紅葉や楓の葉が浮かんでいた。それらは波によって上下に動いて、どこか嬉しそうに見えた。
そこをゆらりと横切ってゆくのは一隻のボート。赤や青の原色で塗られた外観がわびしさを感じさせる。
ボートの主は若い女性で、不断は使わないような筋肉を使っているせいか、涼しい風の中で額に汗を浮かべていた。表情は険しく、美しい湖面の風景ではなく足元の木目を凝視したままオールを操っていた。
それから少し経って、女性は久しぶりに腕時計を確認した。午後三時二十分。それは早い時間なのか遅い時間なのか、彼女の行動を見る限りでは分からない質問だった。ただ、時計から顔を上げた彼女が再びオールを漕ぎ始めたのは言うまでもない。