2008年3月1日


一言

精神が崩壊してしまいました。人としてやってはならない事をやろうとした自分に嫌気が差します。

本文

一日に二度の食事をし、二日に一度の洗髪をし、四日に三度は新聞を読みます。あ、でも、たまにそうじゃない時があるから要注意です。

そうですね、あとはこれといった特徴は無いと思います。ええ、これといった特徴です。

もちろん、もっと細かい嗜好などはありますよ? でもでも、それを説明してもあまり役にはたたないんじゃありませんか? でしょ? それなら刑事さんは私なんかに構っていないで、さっさと捜査を始めた方が良いんじゃないですか?

ええと、私が彼の共犯である可能性が、ですか。おかしなこと……ではありませんよね。そうですよね、確かに私がおかしな事を言って彼を匿おうとしているかもしれませんね。

でもでも、それならご近所の方々が証明してくださると思います。ええ、私だって、自分のおかしなところぐらいは把握していますよ。喋り方だって、私の声、やけに甘えたように聞こえますよね? 仕方ないんですよ。小さい頃に色々とあって、私はこうやって喋ることしか出来ないんです。

え、違う? どこが違うんですか? ……喋り方じゃなくて会話の内容ですか? それも同じですよ。近所の人に聞いてみれば分かります。ええ、私、近所の人と話している時もおかしなことばかり言ってますから。もちろん、回覧板とか町内会のプリントとかはきちんと回してますし、ゴミ出しの日もちゃんと守ってます。

でもね、雑談とかになると私はおかしなことしか言えないんですよ。ええ、さっきみたいに食事の回数とか、洗髪の回数とか、新聞を読む回数とか。

まぁ、それでなにか問題があるかって言われれば、あまり無いんですよ。だったら構いませんよね? 私がおかしいことを言っても、誰に迷惑をかけるわけじゃないんです。

刑事さんたちにはあまり面白くないのかもしれません。でもでも、さっき刑事さんに言ったことは全部本当のことなんですよ? 食事の回数も、洗髪の回数も、新聞を読む回数も。

有名なお医者さんに言わせれば、『着眼点がおかしい』らしいですね。人の特徴を尋ねられた場合、普通なら性格とか身長とか髪型とか体型とかを答えるみたいですけど、私にとってはそんなものはどうでも良いんです。むしろ日頃の行動の端々に現れる小さな仕草とか、意外と規則正しく動いている関節とか、少しずつだけど着実に積もってゆく埃とかに興味があるんです。ええ、さっき言った色々な回数だって、そうです。

……刑事さんは私を馬鹿にしているのかも知れないですけど、でもでも、あなたにだって規則正しい回数があると思うんです。一ヶ月に食べるお昼ごはんの内、麺類の日が大体十日くらいだったとか、一日に大体二十回くらいはテレビのチャンネルを回しているとか、携帯で打つメールの文章で、一通につき必ず一つは顔文字を使っているとか。

それとも、こういう風に言った方がいいですか? 容疑者を一人捕まえるたびに妻とキスをしているとか、交通事故で死者が出るたびに署内でヤクルトを飲んでいるとか、新人が入ってくるたびに靴を新調するとか。

きっと、あるはずなんですよ。私が言ったことじゃなくても、無意識に規則正しく何かをしているということが。近所の子供達だってそうです。その親御さんたちもそうです。一人に付きなにかしら一つ以上の決まりが見つかります。

……おかしいですよね? 刑事さんの目を見れば分かります。否定しなくても良いんです。私だって自覚していると、さっきも言いましたよね?

そう、私だって自覚しているんです。だからこうやって自分のおかしなところを、だれかれ構わずに話しているんです。