2008年3月10日


一言

自家製三題噺

本文

『お題』

・雨

・オカリナ

・エクレア

失敗した。俺は目の前のオカリナを見て自己嫌悪を催した。このオカリナは木で出来ていて、陶器で出来ているものとは異なる音色が特徴だった。それが俺の好みに合致し、去年の暮れに購入した。

しかし、目の前のオカリナは湿っていた。どうしてかと言えば、それはもちろん雨の降る中、庭に置かれていたからであり、決して風呂の中に落としたからだとかお茶を零したからだとかいうわけではない。

昨日の夕方、俺が外でオカリナを吹く練習をしていると、母が俺に珍しくお使いを頼んだ。晩御飯の後に甘いものが食べたいから買ってきて欲しいのだという。冷蔵庫を覗くとものの見事に甘いものがなかった。台所の棚の中も探してみたが、果物の缶詰一つなかった。

普段なら母が車を飛ばして近所のスーパーに出向くのだが、母はあいにく裏の片付をしていた。また、俺が最近免許を取ったというのも関係していた。俺は、オカリナを庭に置かれている岩の上に置き母の車に乗り込んでスーパーへと向かった。

スーパーのデザート売り場(と言うのだろうか)には、チーズケーキだのフルーツゼリーだのが色々と売り出されていた。昔ならばどこにどのようなものがあるのかを把握できたかもしれない。しかし、母と二人でスーパーに来なくなってから永いので、何がどの場所にあるのか分からなくなっていた。

適当に商品棚を眺めていると、シュークリームやエクレアの並んでいる場所があった。それらは久しく食べていないデザート類で、俺の目に留まった。

特に、エクレアは学校給食で食べたのが最後だった気がした。シュークリームはたまに母が買ってくるが、この細長くてチョコレートの載った洋菓子は母の目に留まらないようだ。

幾つかの種類のある中で、俺は小さいエクレアが六つ入っているパックを見た。値札には母から渡された金で十分買える値段がついていた。