■場所
壁
■状況
壁を登るスポーツが存在するっす
■本文
手で色の付いた石を掴み、体重の半分程度をそこで支える。足も同じく石の上に載せて、滑らないようにしっかりと体重を乗せる。これでスタート体勢の出来上がり。ここから壁の一番右端まで地面に足を着けることなく、石を伝って移動するのが目的。
使う石の色は灰色――色によって難易度が異なる――で、昨日に達成した赤色の石よりも一段階難しい。
まず初めに左手を上に伸ばし、掴みやすい石をしっかりと握り締める。そこを支えとして右手と左足を浮かせ、少し遠い小さな石に右手を引っ掛け、申し訳程度に出っ張っている石に左足を乗せる。
次に、右手で体を右に寄せて、右足をより右にある石に移動させる。両の手で体を左右に引っ張ったような形になり、見る人によっては大の字になって壁に張り付いているように見える。
これからが難しい。右手を引っ掛けたまま左手で掴んでいる支えを離し、右手の近くにあるある程度掴みやすい石を左手で掴まなければならない。
その後に右に傾いた体を立て直すために、左手を支えにして両足を右へ移動。その間右手は力を入れっぱなしにする必要がある。
と、そうこうしている内に手の力が弱まり、支えにしていた左手が石から離れてゆく。それは同時に右手の終わりもあらわしており、左手が離れれば右手で支えている体重は空中に放り出される。
すなわち、地面に足を着いてしまった、ということになる。灰色の石、失敗。
俺は集中していた意識を現実に引き戻し、一つため息をついた。始めてこれをやったときにはありえなかったくらい上手く壁を横移動できるようになったと思う。
しかし、それでもまだ足りない気がした。