■場所
砂漠という名の人生の中
■人物
旅人さんと私と空しさ
■状況
歩くのとか戦うのとか、いろいろあるです
■本文
何をしているのだろうか。結局、目に見えるものでしか目に見えないものを判断できないというのは、この世の理の凡てを表しているのだろうか。
歩いて、走って、乗って回ってたどり着いた先には何があったか。私はさばくの中に立ち尽くす一人の旅人に出会った。それはまるで断崖絶壁に咲く一輪の花のように永遠を孕んでいた。
彼は帽子を取ると私に向かって手を差し出してきた。私はそれを握ることなく彼の目を見ていた。彼は悲しそうに首をもたげたあと、きれいに腕を曲げて、その隙間から何かを発射させた。
私は咄嗟に避けた。しかし間に合わなかった。それがゆっくりと私の腹に飛んでくるのが確認できた。それはミサイルでもロケット花火でもなんでもなく、ただの私の過去だった。私の過去がいっぱいに詰まった思い出の入れ物だった。
それが私の腹で炸裂した。思いのほか痛くはなかったが、炸裂の瞬間に放たれた過去たちは光り輝いて砂漠の空と砂との隙間に消えてしまった。
私はしばらくの間、炸裂の衝撃で動けなかった。旅人である彼はずっと私を見ていた。私が反応しないのを良いことに、もう片方の腕も曲げようとしていた。
阻止せねばならない。もう一度、恐らく今度は私の未来を彼は発射しようとしている。それを胸に受けてしまったら私はひとたまりもない。
恐怖に打ち勝つためではなく、恐怖に突っ込むためでもなく、恐怖と一緒に海に浮かぶために私は必死に彼にすがり付いて動作を制止させた。彼は困った顔で私の顔の中心辺りを眺めた。
思い出したことがあった。そう、私の顔には一つだけアレがくっついていたのだ。私は自分の顔にくっついているアレをはがして彼の顔にくっつけた。彼はその瞬間に目を見開いて、涙を流しながら砂の地面に倒れてしまった。
私は安堵した。砂漠の中にいる旅人は恐ろしいと思った。彼らは何でも知っている。知っていながら知らないふりをして、それでいていざとなったら攻撃を仕掛けてくるのだ。
私は歩き出した。しかし、再び引き返して倒れている彼の頭から帽子を取って、それを被った。
これは一種のお守りだ。旅人である彼が唯一私にみせた弱点であるところの帽子。
明日は晴れるだろうか。