■場所
断崖絶壁
■状況
捕り物劇みたいな
■本文
答えの見つからないパズルなど存在しない。しかし、答えの見つからない謎なら存在するかもしれない。
目の前に立ちはだかるは断崖絶壁。背後に迫るは黒服の男達。皆その手に拳銃を構え、銃口の先には私の頭があるような気がする。否、彼らは紛う方なく私の頭を狙っている。
「もうお前に残された逃げ道は無いぞ」
男の中の一人が言った。そいつは黒服の中でもガタイが一番大きく、強面の顔にはナイフか何かで切ったような痕があった。
「そろそろ、追いかけっこを終わりにしよう。さぁ、手に持ったソレを渡してもらおうじゃないか」
ナイフ痕の男が手を伸ばす。私は男を見ながら背後に迫る断崖を肌で感じていた。男の言うとおり、私にはもう逃げるための道が無い。しかし、素直にこいつを渡してしまったら、亡き父が長年取り組んでいた活動を見捨ててしまうことになる。
つまるところ、この状況をどうやって打破するかが問題だ。
「……ふふ、私には逃げ道が無いだって?」
そう言って、私は崖に近づいていく。
「おい、何をする気だ?」
ナイフ男の声に少々の焦りがにじんだ。私は崖の下に広がる白い波が見える所にまでくると、こいつを掴んだまま手を水平に伸ばした。
「よく聞け。もしお前の握っている大層な金属で私の頭を打ちぬいたらどうなると思う?」
ナイフ男に向かって問いかけると、男はカメムシを踏み潰した時のような顔になった。これで形勢逆転となれば良いのだが。
それから男は押し黙り、後ろにたくさんいる黒服たちに目配せをしたり、首を振ったりした。
しばらく時間が経過した。私とナイフ男の間を幾匹かの海鳥が飛び交い、潮風が二人の髪を揺らした。
「……ふふ、だから言ったろう、お前にはもう逃げ道が無いと」
唐突にナイフ男が発した一言。一瞬、私は男が浮かべた自信に満ちた表情の理由が分からなかった。
「く、下か!?」
伸ばした手を引っ込めてから、白く砕けた波が見えるはずの崖を見下ろす。
そこには、本来存在するはずのないものが広がっていた。
青と無数の黒い点。海の青ではなく、人工的な青。お花見とか運動会とかでよく見かける、ブルーシートとかいうやつだった。
「はっはっは、たとえお前が手を離したところで、ソレは海には消えずにあいつら下っ端がキャッチするってわけさ」
高笑いするナイフ男。