■場所
サラリーマンの仕事場
■人物
幸せそうな男と、その幸せをいぶかしんでいる男
■状況
愛妻弁当ならぬ恋人弁当を見せ付けられている
■本文
「たこさんウインナー?」
「そう、たこさんウインナー♪」
デスクに広げられた田中の弁当箱には、色鮮やかなおかずが敷き詰められていた。
「ほら、これなんて出汁巻き卵じゃね? ああ、俺はなんて幸せなんだ……」
目を細めて黄色い卵焼きをほおばると、田中は溜息にも似た様子で息をはいた。
「うまい、うますぎる……! 可憐ちゃん、俺、午後の仕事も頑張るよ!」
仕事場で隣のデスクに座る田中に彼女が出来たのは、一週間程前の事だった。どんな経緯でゲットしたのかはまだ教えてもらっていないが、それはあまりにも唐突だった。
初めて田中が彼女の作ったお弁当を持ってきた日、俺を含めた周りの人間は目を見合わせて驚いた。失礼なのも構わず、あの男にも春があるんだなとか、よっしゃ俺にも可能性ありまくりじゃんとか、ひそひそ話が辺りに広がっていた。
「ああ、そぼろのご飯ってこういう味なんだね……、可憐ちゃんみたいにとても甘い味だよ」
彼女が出来てからの田中は、色々な意味でずいぶん変わった。昔はこういう風に食事中に独り言をつぶやいたりはしなかったが、田中の言う通り、お弁当の効果かは知らないが、確かに午後の仕事は頑張っている気がする。
俺は初め、田中が悪い女に騙されているのではないかと疑った。あの田中に彼女が出来るなどとうてい信じられなかったのだ。
昼休みに田中が広げた弁当箱。それを三日連続で見たら、俺の心配は杞憂だったと思えた。手の込んだ弁当が勢いく良く田中の