| 桃色琥珀〜ももいろ〜 ※今すぐ君の元へより続きです。 ガサガサガサ… ガサガサ… 「…ここにもない…」 はぁ… ちいさく零れる吐息。 いつからか呼吸は溜息へと変わっていた。 サアラはエドとアルと別れた後もじっと待っていられず、少しでも可能性がありそうなところを懸命に探していた。 エドとアルを信じられないのではない。 もしかしたら見落としてるかもしれない…!もしかしたら…! そんな希望がサアラの背中を押すから……じっと座って待っているなんて出来なかったのだ。 そうして今日は家からセントラル駅までの道のりの堤防付近を探していた。 太陽の姿が地平線に隠れだして、空が紅く染まりだしたことも… 服や頬にまで土がついていることにも気付かないほど、サアラは懸命だった。 「サアラちゃん、今日も見つからないのかい?もう危ないからそろそろお家へお帰り。」 お隣のおばあちゃんが心配して声をかけてくれる。 「あ・おばあちゃん…!…うん…まだ見つからないの…でも、もう少しだけ、ここをさがしたら帰るから…」 「そうかい?じゃあもう少ししたら必ず帰るんだよ?危ないからね。」 「はい!」 「ばいばいv」 右手をぶんぶんと振る。 おばあちゃんに心配をかけさせないように精一杯の笑顔でおばあちゃんが見えなくなるまで見送ってると… 「おかあさぁん!」 サアラの後ろからちいさな子供が”おかあさん”と思われる女の人のところへ駆けていく。 やがて母親に辿り着いた子供と母が手を繋いで帰っていった。 サアラはその光景を切ない気持ちで見送る。 「…おかあさん…」 風に震えてしまうようなちいさな声で呟くと、その声はすぐに空気に溶けた。 ガサガサ…ガサガサ… おねがい…!とても大切なの!おねがいだから出てきて…! 「…どうして…」 サアラの願いも虚しく、今日も琥珀は見つかることはなく、無情にも辺りは薄紫色になり始めていた。 「……もう帰らないと…」 そう言って立ち上がろうとしたサアラの身体がふらっと揺れ、足がガクッとする。 「きゃ…っ?!」 堤防のすぐ下は河だ。水嵩は少なそうに見えるが深さは得体が知れない。 ――このまま落ちたら…私…死んじゃうかも… サアラはギュッと目をつぶる。 どさっ! 「…っぶねー!!間一髪〜!アル、ナイスキャッチ!」 「大丈夫?サアラちゃん!」 聞いたことのある声が頭の上でした。 あ、れ…どこも痛くない…? 「…?」 恐る恐るそっと目を開けると… 「お兄ちゃんたち…!」 サアラはアルに抱きとめられ、アルは上から、エドが横から笑顔でサアラを覗き込んでいた。 アルはサアラを抱えて堤防をのぼり、エドはその後をのぼると、アルはサアラをそっと降ろした。 それを見終えると、 「こらー!サアラ!こんな時間まで女の子が外にいちゃ危ないだろっ!」 さっきまでは笑顔だったエドからお怒りが飛ぶ。 「まぁまぁ;兄さん;…でもサアラちゃん…もう少し遅かったら本当、危なかったよ〜!」 アルは兄をなだめつつ、サアラに注意を促す。 「ご、ごめんなさいっ;;」 サアラはぺこっと頭を下げる。 しゃら… 頭の上でちいさな音がして少し顔をあげるとサアラの目の前にゆらゆらと揺れる桃色… 「ほら!もう無くすなよ!」 そういうとエドが左手でサアラの右手を支えて右手に掴んだ鎖をそっと掌に置いてやる。 それは、ずっと探してた… 一瞬、ビックリした表情で琥珀を見つめたが、エドとアルの顔を順に見ると… サアラはぎゅうっと大切そうに両手に包んで胸に抱きしめる。 「遅くなって悪かったな…;」 「予定じゃ昨日渡せるはずだったんだけどね〜…」 アルが横目でちらりとエドを見る。 「うっ;」 エドはその視線を避けるように反対方向を向く。 サアラは「ううん…」とふるふると顔を横に振ると、 「…お兄ちゃんたち…見つけてくれて…ありがと、…っ!」 とエドとアルが思い描いていた以上の最高の笑顔で微笑った。 と、思ったら、 ぽろ… ぽろぽろ… サアラは嬉し涙が止まらず、ぽろぽろと頬を伝い落ちる。 「わ;サアラ泣くな〜;」 「ああっ泣いちゃダメだよ〜;」 エドとアルが困っておろおろする。 「見つかって……うれしい…」 「ん、サアラ…おまえ頬に土ついてっぞ;」 エドがコートの袖で涙と土をそっと拭ってやる。 「あ;服にまで土がついちゃってる;」 アルもパタパタと服の裾についた土を掃ってやる。 堤防から、サアラの家の前まで…真ん中にサアラを挟んで手を繋いでゆっくり歩きながら、 琥珀がどこにあったか、とか、猫の話とか、町の話とか… 他愛もない話をして、 あっという間にサアラの家の前に着いた。 「…さ、もう帰らないと…ね♪」 アルが名残惜しさを押し殺しながらサアラの両肩にぽんと両手を置いた。 「…お父さんが、きっと心配してる。」 エドも名残惜しさを悟られないようにサアラの頭を撫でてやる。 「ありがとう!」 もう一度お礼を言って微笑ったサアラの頬は桃色琥珀のようにうっすらと桃色だった。 サアラは手を振りながら家の中へ吸い込まれ… ぱたん ドアの閉まった音が静かに響いた。 サアラがいなくなってまた2人きり。来た道を折り返し歩く。 「…なんか、妹がいたら…あんな感じだったのかな…」 ぽつりとエドが呟く。 「あ、兄さんもそう思った?僕もそう思ってた。」 アルもぽつりと呟く。 外はすっかり日が暮れて、1番星が空高く輝いていた。 ガタタン… ハッと気付けば見慣れた景色が流れている。 リゼンブールまでもう少しというところだ。 ――長く、思い出に浸っていたようだ。 窓の枠に右肘を立てて、ボーッと外を見ていたエドが、くす。と笑みを零す。 「え、何?どうかした?何か面白いものでもあった?」 思わず周りをきょろきょろ見渡すアル。 「いーや。別に!なんでもねーよっ!」 そう言うとふっとエドが微笑う。 列車はもうすぐ切なく愛しい場所へ… * * * * 桃色琥珀〜後日談。。。〜 「視察ご苦労だったな。鋼の。」 ばさり。数枚の報告書にさらりと目を通しサインをしながら大佐が口を開いた。 サアラと別れた翌日、エドとアルは軍を訪れていた。 アルは例の人質?になった部屋で待たせてもらって、 エドは大佐に例のちいさな村の視察の報告書を提出しに、だ。 立派なソファにどかっと座ってるエドが口を開く。 「なんか町っつーよりリゼンブールよりど田舎だったぜ。」 散々な目にあったのを思い出して「うげっ」と青汁でも飲まされたような顔になり、舌を出す。 その様子を横目で楽しそうに見るロイ。 「じゃあ、報告書もちゃんと渡したし、オレ帰るよ。」 長居は無用。と言わんばかりにさっさとエドが席を立ち、ドアノブに手をかけようとしたとき、 「ああ…、そうだ。鋼の。」 ロイに引き止められる。 「あ?」 左の眉を少々傾けてエドが振り向くと、 「セントラル駅で少女には会えたかね?」 急に思い出したような口調で問うロイだが、エドには妙にひっかかるものを感じた。 「……なんで大佐が知ってんだ?」 もしかして、もしかしなくても…なんとなく、気付いてしまったけど…… ロイはちっちっち、と右手の人差し指を左右に動かして、 「私は大佐だ。君達の行動などなんでもお見通しなのだよ。」 大体、君達はどこにいても騒がしくてすぐ私の耳に入ってくる。 そういうと大佐は笑う。 至って普通の会話のようだが、エドはロイの言葉回しから確信してしまった。 あの少女の探し物こそが、大佐の本当の頼みごとだったということが。 「ちくしょーっ!やられたーっ!」 また新たな賢者の石の情報を追いかけるべく、セントラル駅へと向かう道のりでエドがぼやく。 「でもサアラちゃんは本当に困ってたんだし、あんな可愛い笑顔を見れて良かったじゃないv」 そう言ってアルが嬉しそうに笑う。 「だなっ!」 エドも悪戯っぽく笑う。 また大佐に上手く使われたような気がして気は晴れないが、 今回はサアラに免じて許してやる。 空を見上げる。ゆっくりと流れる真っ白な雲。どこまでも透けるような青い空。 今日も良い天気だ。 夕方にはきっと、あの日のサアラの頬のような、桃色の空になるだろう。 2004・5・5 UP 〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜* 桃色琥珀シリーズ、今回にて完結です!初めての長文&長期連載でドキドキハラハラしながらここまで来ました。 拙い部分がたくさんありますけれど;なんとか無事終わることが出来てホッとしてます^^; 本人的には最期のオマケ的「後日談。。。」が何気に気に入ってます。 |
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